行政書士業務の中で、様々な会社設立のお手伝いなどをしていると、普段あまり見かけないような業種の方々に出会うことがあります。

一昔前には誰もが思いつかなかったような方法でビジネスをされている方や、ものすごくニッチな商売など。
中でも特に驚かされるのがネットビジネスです。

一般的な飲食業や介護職、建設業などいわゆる行政書士がよく目にするような業種ならば、「何がどうなってお金が発生して商売になるのか」と想像することは難しくありません。

しかしネットの世界に入ると、いったい何で商売しているのかよくわからないけれど稼いでいる人というのがたくさん存在します。
困ったことに、稼げていないけれど稼いでいるふりをしている人もまた一杯いるというところが、話がややこしくなる部分でもあります。

work place
work place / banoootah_qtr

WEB制作やWEBデザイナーなどの職種であれば、おおよそどんなビジネスをしているのかイメージはできます。しかし、俗に言う情報ビジネスなどになってくると、縁のない人にとっては何のことだかわからない世界です。

そもそも商材自体が形のないもので(これについては法律業も同じです)、加えて有象無象の得体のしれない人物が跋扈している事もあり、余計にうさんくさく正体不明な世界になっています。

なお当たり前ですが、まともな会社もちゃんと存在します。
すごいなと思える人物もたくさん。

とある会社の事業目的

Director Dan Ashe and Secretary Salazar Signing Vision Document
Director Dan Ashe and Secretary Salazar Signing Vision Document / americaswildlife

前置きが長くなりましたがここからが本題。

以前にあった話。

個人事業から株式会社への法人成りを手伝わせていただいたときのこと。
その新設会社の主な事業内容は情報商材の販売です。
商材の中身は主にFX関連。

また定款第2条・事業目的は、商材販売だけでなくそこから派生してのコンサルやスクールビジネスも。

当たり前ですが1つの商材の販売のみで売り上げを継続させることは非常に困難です。一時的に数千万~の売り上げをあげる事のできる商材販売の世界ですが、そこから数年経てばほとんどの販売者が消えてしまうのが現実です。

そんな中、しっかり生き残っている事業者を観察していると、一時のヒット商品からうまくコンテンツを連動させ、継続した固定収入へとつなげていっています。それがスクールビジネスやコンサル業。
そういった先の事も考えた上での、お客さまから希望の事業目的でした。

なお、FX関係の事業目的を入れる場合にまず気をつけなければならないのは、その業務内容に金融商品取引業の登録が必要かどうかです。

この件については、当面行う事業のメインがほとんど情報商材の販売だけであり、その内容も調べた結果、登録が必要なものでもなかったので問題なし。

そういった訳で【インターネットによる情報サービス業】、【電子書籍作成・販売】などなどの事業目的を定款に盛り込んでいきました。

そのように色々事業目的を詰め込んでいく中で、ひとつ問題となったのが【FXトレードスクール】という事業目的。

実はこれに限らずですが、「FX」という言葉は定款に記載する事業目的の中に入れる事ができません。

理由はひとつ。
登記申請の時に法務局で弾かれるからです。

法人の事業目的の表記の規制

STOP
STOP / loop_oh

会社法が改正され、かなり基準がやわらいできてはいますが、会社の事業目的にはいくつかの要件が満たされている必要があります。

その要件とは

  • 営利性

  • 適法性

  • 明確性

  • 具体性

などです。

では今回の「FX」という言葉がどの部分に引っかかっているのかと言いますと、「明確性」と「具体性」です。

こちらとしてはFXという言葉を「外国為替証拠金取引」という意味で使用しています当然それで通用するものと思っていますが、法務局的にはそうではありません。

それはこういった外来語や略語の場合、意図しているものと違う言葉や意味が当てはまる事があるからです。例えばFXという言葉は、他の業界では違う意味の言葉として使用されていたりします。

また、そもそも【FX】を【外国為替証拠金取引】の略語として使っているのは日本だけです。どちらかというと【Forex】という呼び方のほうが一般的。

つまり、上記したように【FXトレードスクール】などを盛り込むのであれば

  • 外国為替証拠金取引に関するスクールの運営

  • 外国為替保証金取引に関するスクールの運営

などのように事業目的に記載されなければなりません。

ちなみに今でこそ一般的になったので、【CD】や【DVD】という文言も事業目的に含めることができますが、これも昔はダメでした。理由は同じです。

CDやDVDという言葉が、あの円形の電子記録媒体以外のものを指す可能性があったからです。

ただ、今ではあまりにも普通に使われる言葉となっていますので、事業目的の文言として定款に記載しても、【CD】や【DVD】は問題にならなくなっています。

このように普段ふつうに使っている為、【FX】という言葉を事業目的としても大丈夫と思いがちですが、今のところ使えません。

もちろん他にもそんな文言はあります。気をつけましょうという話。