記事タイトルからして突っ込みどころ満載ですが、毎年6月過ぎ頃からちょくちょく聞かれる質問なのでひとつ。
今回は株式会社の話ですが、一般社団法人などの場合は【取締役→理事】、【取締役会→理事会】と読みかえれば同じです。
まず前提として、取締役会とは何か?
日本の取締役会
日本の会社においては、取締役会は取締役設置会社において業務執行の決定等を行う合議体である。役会(やっかい)と略されることもある。旧商法の下では株式会社に必置(必要的機関)であったが、現在の会社法においては原則として任意的機関であり、取締役会を置かない株式会社(取締役会非設置会社)も認められる。ただし公開会社では設置が義務付けられている。
discussion startups 1 / gaborcselle
もう少し噛み砕いてみます。
一般的な株式会社の話。
まず、会社の持ち主は誰か?と言えばそれは株主です。
しかし株主はお金(資本)は出しますが、経営に関してはプロではありません。そこで実際の経営については専門の人に委託します。
この経営を任される人が取締役です。この人が経営については責任を持ちます。取締役が一人ならその人が代表取締役となり、経営に関するほとんどの決定をする事ができます。
取締役が複数いる場合は、集まって話し合って物事を決定していきます。この場合、複数の取締役を構成員とする取締役会という機関を設置する事ができます(条件によっては必ず設置しなければならない場合もあります)。
なお、取締役会を設置しない時は、複数の構成員の中から代表取締役を選定しなければなりません(代表取締役は複数でも可、また条件によっては代表取締役を定めなくていい場合もある)。取締役会を設置した株式会社は、取締役設置会社と呼ばれるようになります。
小規模な株式会社の場合は、例え取締役が複数人いようとも取締役会を設置しなくても構いません。取締役会を設置すると様々な縛りが生まれる為、実際ほとんどの中小企業では設置しない事のほうが多いです。
取締役会設置会社の取締役会開催義務
取締役会を設置した場合には、会社法363条2項の規定により、取締役は三ヶ月に一回以上、職務執行状況を取締役会に報告しなければなりません。
必然的に、取締役会は一年に4回は開催しなければいけない事になります。
会社法363条2項
(2)前項各号に掲げる取締役は、三箇月に一回以上、自己の職務の執行の状況を取締役会に報告しなければならない。
取締役会のない株式会社の取締役会開催義務
Meeting Essentials / Matthew Oliphant
取締役が一人しかいない株式会社であれば特になんということはありません。しかし「取締役が複数いるが取締役会を設置していない株式会社の場合は、少し混乱があるようです。
とういうのも、そういった会社から
「取締役会って毎年一度開かないとダメだよね?」
と聞かれる事が時々あるのです。
まず、取締役会を設置していない会社の場合、【取締役会を開催する】という事自体が不可能です。なぜならばそんな機関が存在しないから。
しかし取締役が複数いる為、何かを決定する際には集まって会議をして決定するという形になります。
ややこしいのは、この「取締役が集まってする会議」の事を「取締役会」と呼んでしまっている事です。そしてこれらの会議の議事録を「取締役会議事録」と呼んでいたりもします。
「取締役会」が存在しない以上、「取締役会議事録」も存在しません。
ただ議事録の呼び方なんてどうでもいいといえばどうでもいい事なので、自由に名付けて構わないです。
しかし法律上に定められている正式な「取締役会」や「取締役会議事録」ではない、ということは少し頭に入れておいた方が混乱しなくていいかなと思います。
なお、こういった取締役会非設置会社(取締役会を置かない会社)で、複数人の取締役が集まって会議をした時の議事録は、「取締役決定書」などと呼ぶのが一般的です。
結論
ここで記事タイトルに戻りますが、この取締役非設置会社における「取締役が集まってする会議」の開催義務はあるのかという話。
もちろんそんな定めは会社法にはありません。
従って開催の義務があるのかないのかという点では、「開催義務はない」というのが正解です。
とはいえ、株主総会にかける議案をまとめたり、経営方針を定めたり、などなど会議を開かなければならない事は色々とあります。ですので義務がないからといって、全く開催しなくてもいいという訳でもありません。