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2012-10-31

そもそもなんで動画や音楽のダウンロードが刑事罰の対象になったのかを考えてみたりしてみる【改正著作権法2012】

2012/10/01の改正著作権法の一部が施行されました。あまり3次元の世界では変化がないように見えますがネット上では少し変動が生じています。

10/1を境にトラフィック量が大きく減少しました。

参考
Geekなぺーじ:違法ダウンロード刑事罰化でP2Pトラフィック激減?

このブログでもアクセスキーワードを解析していると、改正著作権法がらみのワードが非常に増えています。「ダウンロード違法化」や「リッピング違法化」という言葉が一人歩きをしているような状態で、不明な点が多いからでしょう。

39.Arrests.Counter.NSM.IllegalImmigrants.WDC.19apr08
39.Arrests.Counter.NSM.IllegalImmigrants.WDC.19apr08 / Elvert Barnes

DVDリッピングなどは刑事罰の対象にはなっていませんのでそこまででもないですが、ダウンロードの厳罰化については最悪逮捕という事になりますので、気になるのも無理はありません。

リッピングが違法化といってもどうやってそれがバレるのか?動画をダウンロードした場合にそれは監視されているのか?などなど疑問は尽きない様子です。

おいおいそのあたりも記事にはしていきたいと思います。
が、今回はそもそもどうしてこのたびの改正で動画や音楽の有償著作物のダウンロードが刑事罰の対象になったのかという話です。

この疑問の回答は「動画、音楽」のみが刑事罰の対象になり、「画像、漫画、電子書籍」などがその対象になっていない事からある程度の推測が行えます。

動画、音楽の有償著作権物ダウンロードの違法化→刑事罰対象への流れ

Downloading
Downloading / k3anan

・私的録音録画保証金制度

まず、事は私的録音録画保証金制度の存在から始まります。

私的録音録画保証金制度とは何か?

私的に動画や音楽が複製された事により、本来発生するはずであったCDやDVDの売上が減少すると考えられます。その売上減少分を補償する為に、DVDなどの記録媒体にあらかじめ一定の金額を上乗せして販売し、権利者へと支払うという制度です。

乱暴にかみ砕いて説明すると、

CDなどが簡単にコピー出来るようになった事であまり売れなくなる
  ↓
最初からその減少分を見越してCD/DVD等のメディアに値段を上乗せ
  ↓
上乗せ分を補償金として権利者に払う事でバランスを取る

こういった制度です。

根拠となる条文は「著作権法30条の2」

著作権法30条の2では「デジタル方式」で録音・録画をする場合、著作権者に対して補償金を支払わなければならないと定められています。

著作権法
第三十条(私的使用のための複製)
2 私的使用を目的として、デジタル方式の録音又は録画の機能を有する機器(放送の業務のための特別の性能その他の私的使用に通常供されない特別の性能を有するもの及び録音機能付きの電話機その他の本来の機能に附属する機能として録音又は録画の機能を有するものを除く。)であつて政令で定めるものにより、当該機器によるデジタル方式の録音又は録画の用に供される記録媒体であつて政令で定めるものに録音又は録画を行う者は、相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならない。

この条文を基に1992年から私的録音録画保証金制度という制度が開始されています。しかしこの制度は解決出来ない矛盾点を持っていました。

代表的なものは以下の2つです。

(1)録画用とデータ用のDVDメディアの存在

家電量販店などに空のDVDメディアを買いに行くと、「録画用」と記載されたDVDディスクと「データ用」と記載されたDVDディスクが存在します。

今でこそ値段にほとんど差がなくなっているものもありますが、昔は録画用の方が高くデータ用は安いという状態でした。

値段に差がある理由は、録画用のDVDメディアは録画を目的とするものの為その値段の中に「私的録画補償金」が含まれているからです。データ用は録画だけでなくその他のデータも記録するのでこの補償金が含まれずその分安いという訳です。

ただしどちらのメディアも内容に全く違いがない為、データ用のDVDでも普通に録画が出来ます。つまり補償金を支払っていなくても私的録画が普通に可能。それならばユーザーがわざわざ値段の高い「録画用」を買って使う理由がどこにも見つかりません。

結果的にあまりこの制度が機能していないというのが現状です。

※単なるデジタルコピーではどちらを使っても違いはありませんが、デジタル放送を録画するにはCPRMに対応した録画用のDVDメディアを使う必要があります。

(2)PCやiPod等が対象になっていない。

上記した著作権法30条の2によれば「政令で定められた録音・録画機器」により「政令で定められた電子媒体」に録音・録画する場合は著作権者に補償金を払わなければならないとされています。

この場合の「政令」とは著作権法施行令

施行令の中の

  • 第1条 特定機器

  • 第1条の2 特定記録媒体

第1条に定められている機器及び電子媒体が「政令で定められた」ものになります。

その種類を羅列するとかなり長くなってしまうので省略します(詳しくは上記の条文を読んで下さい)。

肝心なのはその「補償金を支払わなければならない」と決められている機器・電子媒体の中にiPodなどのデジタルオーディオプレーヤーやPCが含まれていない事です。

今時はリッピングしてからわざわざ別の媒体に焼いて複製を作るより、そのままHDDやデジタルオーディオに放り込んでおく人の方が多くなっています。

結果的に補償金を上乗せしている電子媒体などは使われず、年々支払われる補償金も減少しているというのが現状であり、この補償金制度は意味をなさなくなっていました。

・ダウンロードが違法化へ

そこでiPodやHDDなども補償金制度の対象にしたらどうだろうか?などの意見もありましたが、メーカー等の業界からの反発もあり結局実現には至らず。
コピーガードで、ある程度私的複製を抑えているので補償金制度は別にいらないのではないかという意見などもメーカー側から出たりしていました。

そう言えばこんな話もありました↓

私的複製に対する補償金制度は、中途半端な状態のままずっと議論だけが続いているという状態のまま。そしてCDなどは売上が下がり続けます。

正直なところ「私的複製の存在がCDの売上を下げている原因」という考えそのものが違うのではないか?という疑問はありますが、その点はあまり触れないでおきます。

この補償金の問題とともにCDなどの売上減少の原因とされたのが、ネット上での音楽等のファイルの流通問題。補償金制度が機能していない現状で、ならばこちらをとなったのが、ネット上に流通していた違法ファイルに対する規制です。

こちらもネット上で無料で入手可能な音楽等のファイルを規制すれば、CDなどの売上が回復するのではないかというのがその目的。

そこで2010年から施行された著作権法ではまず「違法にアップロードされたファイルをその事を知りながらダウンロードすれば違法」とされました。

この時点ではダウンロードは違法ではあるものの刑事罰はありません。
当時の文部科学大臣も「罰則は科さない」という事を明言しています。
ただ違法アップロードは刑事罰の対象となっていた為、この時期逮捕者もそれなりに出ていました。

さてここでダウンロードが違法化されたものの、それにより何か現状が変わったのかと言えば何も変わりませんでした。音楽業界の売上は全く回復せず。

売れるCDと言えば握手券付きのように、おまけとしてCDが付属しているようなものばかり。

ネットに対する規制を強めていくものの、警察署や市役所などからファイルの流出事件が発生(つまり警察署や市役所の職員の中にファイル共有ソフトを使用している人がいる)したりと、散々な事件が続発します。

・違法ダウンロードが刑事罰化

上述したように2009年時点では、あまり積極的に違法ダウンロードに刑事罰を適用する事は推し進められていませんでした。

しかし2011年頃から風向きが変わってきます。
何故か国会において刑事罰化を押す流れが強くなってきたのです。

ここから少し妙な流れで今回の改正著作権法は成立します。

議員立法によるダウンロード刑事罰化の推進
  ↓
なかなか進まない
  ↓
内閣が著作権法の改正案を提出
(これには「ダウンロード刑事罰化」は含まれていない)
  ↓
著作権法改正案の審議終了。通常ならその後採決。
  ↓
採決前に修正案を提出 ←ここで「ダウンロード刑事罰化」が付け加えられる
  ↓
付け足しの修正案を含む原案全体が可決
  ↓
違法ダウンロード刑事罰化

何かあったのだろうなという推測は色々出来ます。

しかも「動画・音楽のダウンロード」のみが刑事罰化されて、漫画や画像、電子書籍についてはダウンロードが刑事罰化されないという歪な内容。

そっち系の業界団体からの影響が伺えます。

細かい話は置いておくとして、このような流れで2012年10月より、「動画・音楽の有償著作権物をそれと知りながらダウンロード」した場合は刑事罰の対象となりました。

今後はどうなりそうか

Collapsing & Lupins
Collapsing & Lupins / Martin Cathrae

一番最初の段階で「私的録音録画保証金制度」について各業界がどうにか合意し、補償金制度がうまく機能していれば違法ダウンロードの刑事罰化には至らなかったのでないかと思います。

ただそれはどう想像しても現実的に無理そうな事です。
落としどころがさっぱり考えつかないので。

ともかく、今回の違法ダウンロード刑事罰化の目的のひとつは音楽業界の売上回復です。

では本当にこれでCDの売上が回復するでしょうか?
この答えについては、大多数の人が言わずとも気がついていると思います。

ダウンロード違法化 → 効果無し → ダウンロード刑事罰化

となったように

DVDリッピング違法化 → 効果無し → DVDリッピング刑事罰化

とならないように願うのみです。

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