2012/10月に著作権法が改正され、このブログにも「改正著作権法 逮捕」や「ダウンロード 逮捕」などのキーワードで訪れる方が増えました。

そんな中、ついに改正後著作権法の適用による初逮捕者が出た模様です。

USPP7.WaterfrontMall.SW.WDC.23sep05
USPP7.WaterfrontMall.SW.WDC.23sep05 / Elvert Barnes

報道されている内容より、少し簡略化して書いておきます。

暗号化してコピーできないようになっているデジタル放送やDVDについて、その機能を解除してコピーを可能にするソフトをインターネットで配信したとして、長野県警察本部は、先月改正された著作権法を全国で初めて適用して、山形県の会社員の男を逮捕しました。

逮捕された理由は、違法ダウンロードでもDVDリッピング行為でもありません。地デジの録画制限を解除するプログラムを販売した事によるものです。

地上デジタル放送は通常の場合、録画が一度しか出来ないように「地デジコピーガード(CPRM)」と呼ばれるプログラムによる制限がかけられています。そしてこの「CPRMを解除するプログラムの販売、譲渡、貸与」などは先日の法改正により違法とされ、更に刑事罰の対象にもなっています。

ただし、今回は「CPRMを解除したから逮捕」されたのではなく、「CPRMを解除するプログラムを購入者にダウンロードさせたから逮捕」です。【CPRMの解除そのもの】は先日の著作権法改正により違法となっていますが、今のところ刑事罰の対象とはなっていません。

ここは間違えない方が良さそうです。

根拠条文はこちら 著作権法より

著作権法 百二十条の二

次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

一  技術的保護手段の回避を行うことをその機能とする装置(当該装置の部品一式であつて容易に組み立てることができるものを含む。)若しくは技術的保護手段の回避を行うことをその機能とするプログラムの複製物を公衆に譲渡し、若しくは貸与し、公衆への譲渡若しくは貸与の目的をもつて製造し、輸入し、若しくは所持し、若しくは公衆の使用に供し、又は当該プログラムを公衆送信し、若しくは送信可能化する行為(当該装置又は当該プログラムが当該機能以外の機能を併せて有する場合にあつては、著作権等を侵害する行為を技術的保護手段の回避により可能とする用途に供するために行うものに限る。)をした者

加えて不正競争防止法の条文

第二条 この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。

十  営業上用いられている技術的制限手段(他人が特定の者以外の者に影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録をさせないために用いているものを除く。)により制限されている影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録(以下この号において「影像の視聴等」という。)を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能を有する装置(当該装置を組み込んだ機器及び当該装置の部品一式であって容易に組み立てることができるものを含む。)若しくは当該機能を有するプログラム(当該プログラムが他のプログラムと組み合わされたものを含む。)を記録した記録媒体若しくは記憶した機器を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入し、又は当該機能を有するプログラムを電気通信回線を通じて提供する行為(当該装置又は当該プログラムが当該機能以外の機能を併せて有する場合にあっては、影像の視聴等を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする用途に供するために行うものに限る。)

十一  他人が特定の者以外の者に影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録をさせないために営業上用いている技術的制限手段により制限されている影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録(以下この号において「影像の視聴等」という。)を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能を有する装置(当該装置を組み込んだ機器及び当該装置の部品一式であって容易に組み立てることができるものを含む。)若しくは当該機能を有するプログラム(当該プログラムが他のプログラムと組み合わされたものを含む。)を記録した記録媒体若しくは記憶した機器を当該特定の者以外の者に譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入し、又は当該機能を有するプログラムを電気通信回線を通じて提供する行為(当該装置又は当該プログラムが当該機能以外の機能を併せて有する場合にあっては、影像の視聴等を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする用途に供するために行うものに限る。)

不正競争防止法第二条一項の10号と11号に定められている「デジタルコンテンツのコピー管理技術やアクセス管理技術を無効にすることを目的とする機器やプログラムを提供する行為」がそのまま当てはまります。

これらに基づき、著作権法および不正競争防止法に違反した疑いで逮捕となっています。

今回、具体的にどこで何をしたから逮捕なのかといえば、「CPRM解除プログラムをインターネットオークションに出品し落札者にダウンロードさせた」、という容疑です。

長野県警に逮捕されていますが、別に県警がオークションを監視していた訳ではないそうです。オークションに出品されているのを見た人から県警へと通報があったとのこと。

ちなみに落札金額は2000円だったとか。

2000円の稼ぎの為に(おそらく複数出品していたと思いますが)、前科を覚悟で違法行為を決行するという事はなかなか考えられません。
おそらく犯罪であるという意識はなかったのではないかと思われます。

ネット上を少し検索してみれば、CPRMやAACSの解除方法を解説しているサイトが山ほどあります。そのあたりも勘違いをさせる原因となったのでしょう。
(条文を解釈するとわかりますが、それらのサイトが違法という事ではないです。)

なお、2012/10月の著作権法改正の一部施行後も、違法ダウンロードによる逮捕者はまだ出ておりません。

最近逮捕者のとてつもない笑顔で話題になったこの事件も↓

あくまで「わいせつ電磁的記録記録媒体陳列容疑で逮捕」されただけであって、P2Pの利用で逮捕されたわけでもなく、ましてや著作権法に基づく違法ダウンロードで逮捕されたのでもありません。(先々どうなるかはわかりませんが)

このあたりについても、ざっと報道を眺めているだけでは勘違いしてしまう事が結構多いので、正しい認識が必要です。