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2012-09-28

定款に「署名押印」と記載されているが「記名押印」した議事録を登記申請の添付書類とした場合、申請は受理されるのか

結論を先に書いておきます。
定款に「署名押印」するようにと記載してあっても、「記名押印」した議事録を添付書類として提出すると大抵の場合登記申請は受理されます。

というように断言してしまうと、もしかして法務局によってはダメなところもあるかも知れませんので、何か業務等で関わる場合はまず確認してからお願いします。

注)なお法務局への登記申請に係わる代理行為を業として行うのは司法書士の職域であり、行政書士の職域ではないという点もあらかじめ了解お願いします。

Text me (Flickr Friday #19: Pen and Paper).
Text me (Flickr Friday #19: Pen and Paper). / elPadawan

署名押印と記名押印の違い

Signature
Signature / Incase.

まず言葉の定義から

・署名押印(捺印)

本人が自筆で自分の氏名を書き、その横に印鑑を押す。
手書き+押印。

・記名押印

自分で手書きする以外の方法で氏名を記載(PCで作成して印刷、他人の代筆など)し、その横に押印する。
印字+押印。

細かい事を言えば、署名の場合は「捺印」、記名の場合は「押印」という使い分けになります。しかし「押捺(おうなつ)」という言葉があるように、実際には混在して使われている事が多々あります。
定款の雛形等でも「押印」で表記しているものが多いのでこの記事では「押印」で統一して記載します。

議事録への押印について、法律ではどう定められているのか

Seal of Approval
Seal of Approval / Lachlan Hardy

一口に議事録といっても法人形態や組織が違えば様々な種類があります。
わかりやすくする為に、この項目では「株式会社の株主総会の議事録」を対象として話を進めます。

元々改正前の旧商法では、244条3項において株主総会議事録を作成する場合に「議長と出席した取締役の署名か記名押印」をする事が義務として規定されていました。

ところが数年前に商法が改正され、新しく会社法が誕生した時にこの規定はなくなっています。

株主総会について定められた現行の会社法295条から325条を見ても、株主総会議事録の作成について定められている会社法施行施行規則72条を見ても、どこにも署名や記名押印の義務については触れられていません。

では法律で定められていない以上、株主総会議事録には誰も押印しなくもいいのでしょうか?

これは押印しなくてもいいが正解です。
誰も押印していない株主総会議事録も十分に有効であり、登記申請時の添付書類としても使用できます。

では逆に、どうして総会議事録に議長や出席した取締役の署名や記名押印がされているのかと言うと、それはほとんどの場合、定款に議事録への押印義務が記載されているからです。

最近ではネット上を少しでもさまよえば定款の雛形なんてゴロゴロ転がっています。そしてほとんどの雛形には株主総会に関する章に以下のような条文が含まれているはずでしょう。

第 ○○ 条 (議事録)
株主総会における議事の経過の要領及びその結果並びにその他法令に定める事項は、議事録に記載又は記録し、議長及び出席した取締役がこれに署名若しくは記名押印又は電子署名をし、10年間本店に備え置く。

このうち「10年間本店に備え置く」の部分はそもそも会社法に定められていますので(会社法318条)、定款に書いていようが書いてなかろうが作成された議事録は備え置く義務があります。

しかし署名・記名押印に関しては、このように定款に定めていない限り、義務は発生しません。では手間暇を省く為に押印義務を記載しない定款の方がいいんじゃないかという話も出てきますが、それはそれであまりお勧め出来ません。

誰の署名も記名押印もないまま総会議事録が有効になるような状態であれば、それらの書類を偽造する事がかなり容易に出来てしまいます。
トラブルが発生する可能性を少しでも低くする意味や、真実性を担保する意味合いから考えても、定款に押印義務を定めておいた方が望ましいと言えるでしょう。

また同じ理由から、例え定款に議事録への押印義務が定められていなくても、習慣として総会議事録には出席した議長と取締役の署名・記名押印(ほとんど記名押印になりますけれど)をするように案内する事が多いです。

※少し余談。
一人会社(役員・株主ともに1名で同じ人の会社)で多いケースですが、役員変更などのように登記に関わる事がない限り、株主総会議事録自体を作成していない所は多いと思います。
しかし総会議事録の作成は会社法318条で定められた義務であり、怠った場合には代表取締役には罰則がありますので(会社法976条)注意が必要です。

※更に注意
商業登記規則61条4項に定められた場合には、会社法施行規則に定められていなくても議事録への押印が必要となります。興味のある方は調べてみて下さい。

気を付けるのはNPO法人などの定款の雛形

Pen to Paper
Pen to Paper / Orin Zebest

上述したように株式会社の定款であれば、雛形に押印の方法として「署名若しくは記名押印又は電子署名をし、」と定められている事がほとんどです。
この場合、文字通り議事録には、署名をしても記名押印をしても電子署名(あまり電子署名はないと思いますけれど)をしても、どの押印の方法でも構いません。

しかしNPO法人の場合には、注意が必要です。
どういう訳なのか、都道府県が配布しているNPO法人の定款の雛形では、議事録への押印について少し違った形で記載されている事がよくあります。

例えば大阪府庁のこのページからNPO法人の定款の雛形をダウンロードして条文を確認してみると

第29条 総会の議事については、次の事項を記載した議事録を作成しなければならない。
(1)日時及び場所
(2)正会員総数及び出席者数(書面表決者又は表決委任者がある場合にあっては、その数を付記すること。)
(3)審議事項
(4)議事の経過の概要及び議決の結果
(5)議事録署名人の選任に関する事項
2 議事録には、議長及びその会議において選任された議事録署名人2人以上が署名、押印しなければならない。
3 前2項の規定に関わらず、正会員全員が書面により同意の意思表示をしたことにより、総会の決議があったとみなされた場合においては、次の事項を記載した議事録を作成しなければならない。
(1)総会の決議があったものとみなされた事項の内容
(2)前号の事項の提案をした者の氏名又は名称
(3)総会の決議があったものとみなされた日
(4)議事録の作成に係る職務を行った者の氏名

以上のように記載されています。(2012/09現在)

色々書いてあるので抜き出しますと、議事録への押印については

2 議事録には、議長及びその会議において選任された議事録署名人2人以上が署名、押印しなければならない。

「署名押印」のみとなっています。

調べてみたところ、内閣府・大阪・千葉・愛知・埼玉などで配布されているNPO法人の定款雛形では「署名押印」となっており、東京や神奈川などは「記名押印または署名」としているようです。

もし行政書士などに頼んで認証申請を代理してもらっているのであれば、実務上の観点からもここは株式会社と同じように「署名若しくは記名押印」のように変更していることでしょう。
それならば問題ありません。

しかしNPO法人はあまり専門職に頼まず自分達で設立されるケースも多いです。そのような場合に後から定款を見させてもらいますと、ほぼ雛形をそのまま使用し、総会議事録へは「署名押印」を義務付けている事がほとんどです。(大阪の場合)

つまり「社員総会議事録には必ず署名押印が必要」と気づかずに定めてしまっているのです。

定款には署名押印となっているが、記名押印した総会議事録は添付書類として有効か?

Pen & Paper
Pen & Paper / niXerKG

このように「署名押印」としか定款に記載されていない状態で、総会議事録へ記名押印した場合、その書類(議事録)は法務局での添付書類として使えるのか?という問題。

この記事の冒頭で先に結論を述べているので今更なのですが、法務局は受け取ってくれますし添付書類として有効です(申請は受理され登記も行われます)。

このあたり、どうしてそれで大丈夫なのか非常に謎だったので、とあるNPO法人の総会議事録を作成した時に、何ヶ所かの法務局へ問い合わせた事があります。

自分の場合、何か疑問に思った事がある場合には、同じ質問を複数の法務局なり管轄の役所に問い合わせます。担当の人や役所によっては、同じ手続きでも答えが違う事がありますので、最終的に集めた答えを比較検討して万全を期す為です。

今回のようなケースでは、得られた回答を分析するとこんな感じでした。

  • 定款に「署名押印」と定められているのに「記名押印」した議事録は間違いではある

  • しかしそれは【登記を却下する事由】に当たるほどのものではない

  • したがって登記申請は受理される

厳密に言えば出席者の記名押印で議事録を作成するなら定款の変更をするべきです。それが正しいやり方。
しかし役員変更等の場合に法務局へ提出する総会議事録は、記名押印でも出来てしまいます。

ただこれは言うなれば「仕方なしに許してもらっている」ような状態。
本来なら間違いです。
専門職などが携わっているなら、結果として変更登記が可能であったとしてもあまり気分のすっきりした状況ではありません(人にもよると思いますが)。

出来るのであれば、そのうち開催される社員総会などで定款を変更し(NPO法人の定款変更はかなり時間がかかりますが)、実務上堂々と動きやすいように条文を変えておく方がいいでしょう。

※注)
なお、上述した内容はあくまで法務局での扱いに限定されます。
NPO法人の場合は事業報告等で所轄庁へ総会議事録を提出する事があります。
所轄庁によっては、定款に「議事録には署名捺印」と記載されている法人が、記名押印した議事録を提出した場合、署名押印に修正した上で再提出を求められる事もありますので、注意が必要です。
(とある県で実際にあった話です。)

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