行政書士や司法書士、弁護士等のいわゆる士業と呼ばれる職業の、仕事内容のほとんどは代理行為です。

お客様からなんらかの依頼を受けて、それぞれの制度に定められた法律に基づく各種行為を依頼人の代わりに行います。

例えば行政書士であれば行政書士法の第一条に定められた官公署に提出する書類の作成、その他権利義務又は事実証明に関する書類の作成などなど、またそれに付随した諸々の事についての代理業務。
これが司法書士であれば司法書士法の第3条に定められた範囲を業務として行います。

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Working from home / ishane

当然、代理業務を行うわけですから、たいていの場合当事者からの委任状が必要になります。

業務によっては特に委任状を使わない事もあったりはしますが、官公署相手に代理で申請や提出を行う時にはほぼ必須。

そしてこの委任状には、委任をする相手方からの印鑑(押印)が必要となります。
印鑑の種類は必要に応じて、実印・認め印・法人印などその内容によってケースバイケースなので色々です。

一般的に押印してもらう箇所は、委任状の中で
委任者の名前や住所が書かれた横の部分

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それから委任状の上のあたりのどこか適当な所

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こちらは捨て印と呼ばれるもので、あとから委任状の内容について軽微な変更や修正などをする時に必要となります。

この捨て印の横に「○文字削除 ○文字追加」と書き加え、そして委任状の内容で変更や修正をしたい部分を2重線で消しておく、という形で後から修正が可能となります。

通常なら、2重線で消す場合にはその上に訂正印を押さなければなりませんが、あらかじめその代わりの押印をしてもらっておくという感じです。

なお、これはあくまで軽微な変更に関して有効なだけであって、委任の内容の根幹に関わる部分については捨て印で変更する事はできないとされています。
委任の内容を捨て印で全部変えられるなんて事になれば、それは白紙委任状に押印してもらってるのと同じ事になるので非常に危険です。

委任状が一枚だけなら押印はこの2ヶ所だけです。

しかし複数枚に渡る場合には、全部のページが関連して一体である事を示すために契印が必要になります。

複数枚に渡る委任状を製本テープで閉じているなら、その製本テープと委任状との境目に

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もしくは普通に端をホチキスなどで留めただけであれば全ページに

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それぞれ委任者からの契印を押していきます。
委任者が複数名いる場合は全員分。

ちなみに公証役場が作成する書類などは、このように

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ズガっと【公証】という文字の穴を開けて契印代わりにしている事もあります。もちろん全ページに契印をする公証役場もありますので、それはもうそれぞれの場所によって違います。

さて、ここまでが枕話。

自分の場合、委任状が複数枚に渡る時というのは、ほとんどの場合公証役場で電子定款認証をする際の委任状です。

電子定款認証をすると時には、委任状の後ろに定款の内容を印刷したものを引っ付けて冊子状に製本しなければなりません。

なお余談ですが、冊子状に製本しなければなりませんと書いたものの、とある県の公証役場にて電子定款認証をする際に「定款を印刷したものと委任状は別々でもいいよ」と言われた事があります。

紙の定款と違って電子定款の場合は、必ず委任状を冊子状にして持って行かなければならないと思っていたので「あ、ほんまですか?」と驚いた事があります。
ただそこの公証役場以外ではそんな事を言われたことがないので、今後も冊子状ですると思いますが。

いずれにしても、その委任状には委任者からの押印をもらわなければなりません。
それには直接お客様のところへ行くか、郵送で送って、押印後に送り返してもらうという方法があります。

自分がその場にいて押印してもらう場合には、ちゃんと確認しますのでまず問題はありません。しかし郵送などで送り、自分がいない状況で押印してもらう時には、たまにミスがあったりします。

以前にあったのが、複数枚に渡る委任状で、通常の押印と捨て印はしてもらったものの、お客様の方で契印を押し忘れたというケースがありました。

このままでは公証役場で定款認証ができません。
普通であればちょっと時間は延びますけれども、お客様のところへ行くなりもう一度郵送するなりして契印だけ追加で押してもらえばそれで解決する話です。

しかしその時は諸事情あって時間的に余裕がなく、できればその日の内に定款認証は済ませておきたいという状況でした。

さてどうしたものかという感じだったのですが、結論から先にいえば、契印なしの委任状でも電子定款認証をしてもらう事ができました。

ただし、本来やはりその委任状ではダメなので、必ず後日きちっと全て押印した委任状を公証役場へ持ってくる事という条件つき。
委任状に必要な押印が抜けている状態で認証までしてもらえるとは思っていなかったので、大助かりです。

しかしこれはいつでもどこの公証役場ででもできる事ではないでしょう。

前提として、その公証役場にはしょっちゅう依頼をしており、公証人の先生とも親しくなっていて、かつこちらが行政書士という資格者であるという事もあって融通を利かせてもらえたのだと思います。

おそらく一般の方が一見さんとして公証役場で手続きをする場合、書類に不備があれば間違いなく後日出直しという事になるでしょう。

ただ、なかにはこんなケースもあるんだなという面白い経験でした。